成果ないまま課題を残して終了
5月4日(金)、ブガイスキ議長(ポーランド)が冷静に「閉会」の宣言をすると、議場でも静かな拍手がおきて、2週間にわたる2020年核不拡散条約(NPT)再検討会議第2回準備委員会が終了した。はたして、2020年のNPT再検討会議に向けて、大きな成果はあったのか。残された課題は何か。日本は「橋渡しの役割」を果たすことができたのか。サイドイベント等の情報を含めて総括した。
大きな成果なし
会議の内容をまとめた議長報告が象徴しているように、準備委員会での議論は概して「想定内」のものが多く、画期的な提言や成果は皆無といってよかった。中東問題や中距離核兵器(INF)の問題をめぐり、特に米ロの間で冷戦時代の再来を思わせるような非難合戦こそあったものの、会議での実質的な議論が盛り上がることもなく、ほとんど時間内か早めにセッションが終わることが多かった。その中で、新たな議論として唯一注目されたのが、核軍縮・不拡散分野において持続可能な発展目標(SDG)とジェンダーの役割であった(短信①参照)。また、本会議での低調さと対照して、多様なサイドイベントが開催され、その議論の中身も充実しており、事実上の「トラック2」の役割を十分に果たせるようになっている(短信②参照)。
総合すると、全体としての会議の評価は、「ほぼ想定内で、大きな成果はなし」ということになろう。
対立は解けず、逆に溝は深まった
その一方で、解決すべき課題はそのまま解決せずに残された。特に注目されたのが、核保有国/「核の傘」国と非核保有国の対立の解消へ向けて何らかの進展が見られるかどうかであったが、結論から言えば溝はむしろ深まった感が強い。
それを象徴したのが、議長報告をめぐる最後のセッションであった。それまでは比較的批判を抑え気味だった非同盟諸国から、ここにきて「核保有国寄りの報告内容だ」と次々と厳しい批判が相次いだ。核兵器禁止条約をめぐる対立は核兵器国の軍拡路線もあって、対立はさらに深まった感が強い。「核の傘」国による「橋渡し」の議論も多少は評価されたが、対立を溶かすほどの効果はなく、このままでは、対立を残したまま2020年を迎えることになりそうだ。それを避けるためには、今後は「溝を埋める」議論が必要だろう(ブログ第1報、第2報)
具体的論点としては、核兵器と安全保障をめぐる議論が良い例だ。核保有国・「核の傘」国は、悪化する安全保障環境を理由に、核兵器(核抑止)の重要性を強調し、非核保有国は「核兵器の非人道性」から核兵器こそが人類の安全保障の脅威である、と反論する。さらに安全保障と核軍縮の議論を切り離そうとする試みや、核兵器の存在こそが安全保障環境を悪化させる原因だという指摘を行う国もあった。安全保障が悪化しているという共通認識はあっても、安全保障と核兵器をめぐる対立構造はさらに深まった感がある。
もう一つ、2015年再検討会議での合意文書採択を阻んだ原因といわれる、中東問題をめぐる対立も解決されないまま、さらに深刻になった感が強い(ブログ第3報)。
再確認されたNPTの重要性と課題
一方、NPTそのものの重要性、特に核不拡散分野での成果、原子力平和利用の重要性については、ほぼ全参加国の間で再確認され、この点は共通基盤として認められたといってよいだろう。とくにイラン核合意(JCPOA)については、「離脱」の懸念があるトランプ政権に対し、多くの国が合意維持の重要性を強調した。当の米国でさえJCPOAそのものを否定しようとはしなかったことは、JCPOAの維持に希望を持たせるものであった。
また、1995年、2000年、2010年といった節目の合意文書については、その履行を改めて強調する見解も多く出された。ただ、「中東非大量破壊兵器地帯」への交渉停滞がNPT全体の合意を阻む場面が続いているのを見ると、合意プロセスそのものに対する改革の必要性も意識されるようになってきており、日本をはじめ一部の国から見直しの見解が出された。
このほか、注目される共通認識として、「市民社会の参加」と「核軍縮・不拡散教育」の重要性である。ここでは、特にサイドイベントで存在感を発揮したNGOや、被爆者団体、若手代表団の存在感が増しており、その重要性を指摘する国が増えていることは、低調な会議の中の「明るいニュース」として注目される。
朝鮮半島の非核化
今回は、北朝鮮問題がやはり多くの課題の中でも最も注目されたものの一つだ。まだ現時点では具体的な方向性が見えないこともあり、北朝鮮の動きに対し慎重な姿勢を取りつつも、南北対話に続き、米朝対話に対する期待を示す国も多く、本会議場でもサイドイベントでも希望が感じられた。特に、サイドイベントでの議論で、注目されたのは「朝鮮半島の非核化」という論点である。北朝鮮の非核化にとどまらず、朝鮮半島の非核化を進めることは、当然ながら「核の傘」をめぐる議論につながる。一部ではあったが、サイドイベントで「朝鮮半島非核兵器地帯」が議論されるなど、南北・米朝対話の機会をとらえて、一気に北東アジアの平和と非核化を達成する動きが活発化するかもしれない。
日本の対応は評価が分かれる
最後に日本政府の対応については、評価が分かれた。「橋渡し役」を具現化した賢人会議の提案、NPTプロセスの見直しのためのワーキンググループ設置など、核軍縮不拡散イニシャティブ(NPDI)の提案が、議長報告にその要点がそのまま含まれた点は、日本外交の成果として一定の評価がされたといえる。一方で、ブラジルのように、明確にこれらの提言を取るに足りないとする意見も出されており、唯一の被爆国でありながら、核の傘に依存する国として核保有国寄りの立場をとる日本に対する評価は分かれたままであった。今後、核軍縮でどのように存在感を高めていくか、課題は残されたままだ。
(文責:鈴木達治郎、広瀬訓)

NPT再検討会議準備委員会会議場、最終セッション閉会の瞬間(5月4日、撮影:RECNA)

